O.S.WEB MAGAZINE Vol.33
2021 May.まずはここから!模型用ガソリンエンジンの基礎知識
近年、電動飛行機が多く飛ばされる中、スケール機マニアなど、エンジンの排気音も含めて楽しむ、根強いエンジン機派もまだまだ多く、特に最近では、模型用として広く普及しているグローエンジンに加え、小型の模型用ガソリンエンジンも各種のものが開発されていることから、ガソリンエンジンを搭載したいわゆる「ガソリン機」を楽しむマニアが増えています。O.S.でも2ストロークと4ストロークのガソリンエンジンを発売し、ご愛顧頂いております。今回はそんなガソリン機をこれから始めようと思っている方、最近始めたばかりの方に向けた、ガソリンエンジンの基礎知識をご紹介していきたいと思います。

O.S.では飛行機用とヘリ用のガソリンエンジンを発売しています。今回はそんなガソリンエンジンの基礎知識を紹介していきたいと思います。
模型用ガソリンエンジンの点火方式には、最近開発されたグロー・ガソリンエンジンは別として、1次コイルへの電源供給を、フライホイールに取り付けたマグネットとイグナイターなどの点火装置側のマグネットとの間で起電した電力によっておこなうマグネット点火方式と、1次コイルへの電源供給をバッテリーから供給するバッテリー点火方式の二通りの方式があります。
マグネット点火方式の場合には、点火用バッテリーが必要ないという利点があり、バッテリー点火方式の場合には、大きく重いフライホイールを必要とせず、模型用小型ガソリンエンジンの場合には重量的に有利となる利点があり、最近では後者の方式のものが多くなっています。
もうひとつ、大きく異なる部分がキャブレターの仕組みです。グローエンジンはスロットルバルブとニードルバルブ、スローニードルなどで構成されており、毎回ニードル調整やスロー調整などを必要とするが、ガソリンエンジンの場合には、どんな姿勢でも適切な混合気の供給が可能なダイヤフラム式が多く使用されており、多くの場合には購入したままの状態で使用できます。
そして、ガソリンエンジンは燃費がいいことに加え、燃料となるガソリンと混合用の2サイクルオイルを合わせても、グロー燃料と比較すると価格が安く、約1/5以下というランニングコストで済んでしまうほどコストパフォーマンスに優れている点も特徴です。そういった意味で、ガソリンエンジンは難しい調整を必要とせず、意外と手軽に扱えるエンジンとも言えます。

ガソリンエンジン用のスパークプラグ。電極間に火花を飛ばして点火する。

ガソリンエンジンのキャブレター。ロー、ハイニードルなど、一度決めてしまえば、比較的グローエンジンよりも扱いやすい。
2ストロークエンジンと4ストロークエンジンの構造的な違いとは、2ストロークエンジンでは、クランクケース内の圧力変化を利用して給気するため、クランクシャフトに開けられた穴や、キャブレター後方に取り付けられた板状のリードバルブを吸気バルブとし、ピストンが下がると開くようにシリンダー下部に設けられた開口を掃気および、排気口としているのに対し、4ストロークエンジンではシリンダーヘッドに吸、排気バルブを設け、クランクシャフトの回転をカムとコンロッドを通じてタペットに伝え、タイミングよくバルブを開閉する、いわゆるOHV方式が多く採用されています。
2ストロークエンジンの動作は、1:混合気の吸入→2:圧縮・点火→3:膨張→4:掃気・排気の4つの工程をクランクシャフトが1回転する間におこなっており、4ストロークエンジンの場合には、1:混合気の吸入→2:圧縮→3:爆発→4:排気の4つの工程を、クランクシャフトが2回転する間におこなうようになっています。つまり、2ストロークエンジンが1回転に1回爆発しているのに対し、4ストロークエンジンでは2回転に1回の爆発しかしていません。
2ストロークと4ストロークエンジンの違いは、同じ排気量のエンジンであれば、2ストロークの方がより高回転で大きなパワーを発揮するのに対し、4ストロークエンジンの場合は低い回転数で大きなトルクを発生する特性があります。両者はその用途によって使い分けられるが、大型機でより大きなパワーを求めるならば2ストロークを、スケール機で実機のようなメカニカルな雰囲気と、マイルドな排気サウンドを求めるならば4ストロークエンジンを選ぶのが良いでしょう。

バッテリー点火方式のエンジンの場合には、高電圧を作り出すCDIと、CDIに電力を供給するためのバッテリーが必要となります。
これは、ガソリンエンジンのキャブレターがグローエンジンと比較して大きく、クランクケース後方に設けられているものが多く、充分な吸気スペースの確保とメンテナンス性、およびスロットルリンケージを考慮した場合に、この方式がもっとも適しているからです。
エンジンを搭載する際には、グローエンジンと同様に、ドライブワッシャのプロペラ取り付け面から防火壁までの長さを計測し、カウリングの寸法と合わせてスタンドオフエンジンマウントの長さを調節する必要があります。スタンドオフエンジンマウントは、さまざまな長さのものが市販されていますので、その中から選定して取り付けるようにしましょう。
また、ガソリン機のエンジン搭載時には、振動対策と、スパークプラグによるノイズ対策が必要です。特に気を付けなければならないのは、各部のボルトの緩みとサーボリード線など配線の固定です。ボルトの緩みに関しては、ネジロック剤などを使用することと、毎飛行後に各部の点検を確実におこなうことが大切です。
そして配線に関しては、胴枠に開けた穴を通す貫通部などで配線を保護するための配慮が必要であり、貫通穴のバリを取り除き、ゴム製グロメットなどを使用すると確実です。穴開け部は鋭利な刃物のような状態となっていることが多く、これにエンジンの振動が伝わると「超音波カッター」と同じような効果により、簡単に配線を切断してしまうこととなってしまいます。
さらに、ガソリンエンジンのスパークプラグによるノイズ対策としては、受信機をエンジンからなるべく遠ざけた位置に取り付けることと、長いリード線には、中間にフェライトコアなどを取り付けることが有効です。

防火壁からエンジンマウントを使って倒立に搭載されたガソリンエンジン。
模型用としてグローエンジンに広く使用されているシリコンチューブは、メチルアルコールを主成分とするグロー燃料には優れた耐油性を持っていますが、石油系のガソリンに対しては非常に弱く、もし間違って使用した場合には、短時間で侵され膨潤してしまうでしょう。
ガソリンエンジンを搭載した機体の配管には、タイゴンやニトリルゴム、ビニールチューブなど、石油系燃料に耐性のあるものを使用し、燃料タンク本体のポリエチレンは大丈夫なので、タンクキャップのアルミパイプを貫通させるゴムや、タンク内のオモリへと繋がる取り出し用チューブには、ニトリルゴム製のガソリン専用のものに交換する必要があります。
また、ガソリン機の場合には、適切な素材による配管をおこなっても、時間の経過とともにチューブが硬くなり、燃料漏れや接続部から抜ける可能性があるため、接続部は結束バンドなどで固定し抜け止め処理をするとともに、チューブを半年から1年おきに点検または交換するようにしましょう。
機体に搭載する燃料タンクの大きさは、ガソリンエンジンはグローエンジンに比べて燃費が良いため、グローエンジン機の約3分の2程度の大きさでよく、30ccクラスの機体で320~380cc、50ccクラスの機体で550~750cc程度のもので充分に飛行を楽しめます。
さらに、ガソリンエンジンに広く使われているダイヤフラム式キャブレターは、小さな穴が多くゴミに対して繊細なものであるため、エンジンへの供給ラインには、ガソリン対応の高性能フィルターを使用することも忘れないようにしましょう。

DIYの店などで手に入るエンジン用オイル。これをエンジン指定の割合で混合して燃料を作ります。O.S.ではゼノア製のエンジンオイルを推奨しています。

タンクからエンジンまでの配管には、タイゴンやニトリルゴム、ビニールチューブなど、石油系燃料に耐性のあるものを使用し、半年から1年おきに点検または交換するようにしましょう。
また、ガソリンエンジンのエンコンサーボはエンジンの振動をまともに受けるため、なるべく高品質で充分なトルクのあるサーボを使用し、基本的にはグローエンジンと同様に、スロットルバルブが全開からアイドリング位置、そして全閉の停止位置までスムーズに動くように、しっかりとしたロッドでリンケージをおこなってください。この際、スロットルアームにはボールリンクを使用してガタのないようにしましょう。
チョークバルブのリンケージについては、エンジン始動時に一時的に使用するだけなので、ピアノ線などを利用して、手動でカウリングのエアインテークなど、開口部から開閉操作ができるようにリンケージします。
さらに、スロー位置でスロットルアームを固定するアイドリング調整ネジが付いている場合に、ネジを外さず、調整ネジで安定したアイドリングを望む場合には、電気的に送信機のスイッチでイグニッションを「オフ」にしてエンジンを止める「キルスイッチ」を取り付けて、緊急時に送信機側から確実にエンジンを止められるように設定しておきましょう。

ガソリンエンジンのスロットルリンケージは、充分にトルクのあるスロットルサーボと、ボールリンクを使用してリンケージをおこないましょう。

チョークバルブは、エンジン始動時に使用するだけですので、ピアノ線などを利用して、手動でカウリングの開口部から開閉操作ができるようにリンケージします。
そこで重要な役割を担っているのがマフラーです。模型用ガソリンエンジンのマフラーには、バレルタイプマフラー、ピッツタイプマフラー、キャニスターマフラー、チューンドマフラーなどの種類があり、特に2ストロークエンジンにとっては大きな役割をもつ部品といえます。排気バルブをもたない2ストロークエンジンでは、マフラーは爆発の高周波音を低減する消音効果とともに、マフラーの背圧を利用して燃焼効率を上げ、パワーアップさせるという重要な役割を持っているからです。
一般的に、チューンドマフラーと呼ばれているものは、2ストロークエンジンから排出される排気ガスをチャンバー内で一旦膨張させ、チャンバー出口側の細く絞られた部分で反射させることによって、排気口に反射波が戻る現象を繰り返す脈動を利用して混合気の充填効率を上げ、消音効果よりも高回転域でのパワーアップを目的とするもので、レース用の機体などに使用されることが多いです。
エンジンからの排気を、機体の種類や機首の形状に合わせ、マフラーをカウル内に納めやすいピッツタイプのものや、エキゾーストパイプを介して排気を後方へ導き、胴体下部に内蔵するキャニスターマフラーを使用するのが効果的です。特にキャニスターマフラーと呼ばれるタイプのものは、内部がいくつもの膨張室に分かれていることから、大きな消音効果とパワーアップ効果を同時に得ることができるため、アクロ機を中心とする多くのガソリン機に搭載されています。

消音効果に優れたO.S.の2ストロークガソリンエンジンGT60用「E-6020」ピッツタイプサイレンサー。ピッツタイプはマフラーをカウル内に納めやすい形状になっています。

消音性と魅力的なサウンドを追求したO.Sの4ストロークガソリンエンジン用「F-6040」サイレンサー。
ガソリンエンジンを搭載する際には、グローエンジンよりも重量の重いガソリンエンジンを支えるため、マウント廻りの補強を充分におこない、防火壁に直接しっかりと固定して機体全体で振動を吸収できるようにします。また、その振動に伴う機体各部のボルトやネジ類の緩みには特に注意が必要で、ネジロック剤を使用することと、飛行ごとの点検を確実におこなうことが重要です。
特に、マフラーとエンジンの固定ボルトは、確実に締め付けをおこなっても、エンジンの排気熱が加わることもあり、緩みやすい部分であるため、初飛行から5回目程度までは、面倒でも毎飛行ごとに増し締めをおこなうようにしましょう。 メカの搭載においては、グローエンジンにはない装備であるイグナイターユニットや点火用バッテリーを搭載することとなりますが、イグナイターユニットからは、スパークプラグへと高電圧を供給するプラグコードと、点火タイミングを検知するための回転センサー接続コード、そして点火用バッテリーを接続する電源コードの3本のコードが出ています。そのうち、プラグコードは金属製のメッシュにより被覆されており、防火壁の貫通部などで傷みやすいため、ポリエチレン製のスパイラルチューブなどで保護しておくようにしましょう。
メカ類の配線に関しては、コネクタ類の抜け止めと、リード線を胴枠などにしっかりと固定することが重要です。特に胴枠に開けた穴などの貫通部を通す場合には、FRP製の機体の場合に、穴明け部の処理をしないと鋭利な刃物のような状態となっていることが多く、この部分にエンジンの振動が伝わると、振動カッターのような働きにより、短時間で配線の被覆を傷めることとなるので、スポンジなどで保護をしておきましょう。

重量のあるガソリンエンジンを取り付けるため、マウント廻りの補強を充分におこなう必要があります。
