O.S.WEB MAGAZINE Vol.50
2022 October.ここが違う!模型用グローエンジンの 2ストロークと4ストロークの仕組みを知ろう!
①はじめに
O.S.では、空ものやカー用エンジンを中心に、模型用のグローエンジンやガソリンエンジンを多くリリースしています。その中でも、空ものエンジンは非常に幅広いラインナップを取り揃えており、ユーザーの方々の飛ばし方や搭載する機体によって、最適なエンジンが選べるようになっています。 そんな模型用エンジンの中でも一番のシェアを誇るのがグローエンジンですが、初心者の方々にとってエンジン選びの際に「2ストローク」「4ストローク」の違いがわからず戸惑ってしまうことがあるようです。そしてこれは特に初心者に限らず、ベテランのフライヤーでも、正確にその違いや特徴がわからない、という方も意外と多いようです。 そこで今回は模型用グローエンジンの2ストロークと4ストロークの違いを、構造や扱い方の観点から比較していきたいと思います。①2ストロークグローエンジンの仕組み
2ストロークエンジンは構造がシンプルで部品点数も少なく、その分重量も軽いため、昔からRC飛行機やヘリで愛用されてきました。 2ストロークエンジンは次の4つの行程がクランクシャフトが1回転する間におこなわれています。最初に吸入、次に圧縮、そして爆発、排気と続きます。具体的には、ピストンが下がると混合気がクランクケースから燃焼室へ吸入されます。続いてピストンが上昇し、燃焼室が密閉状態となり、混合気は圧縮されます。圧縮された混合気はプラグの余熱で点火し、爆発を起こします。その爆発の勢いでピストンは降下し、掃気ポートと排気ポートが開くことで、新しい混合気が取り込まれ、同時に排気ガスが外部へ排気されます。これを繰り返すことでエンジンは爆発し続け、ピストンの上下運動がクランクシャフトによって回転運動となり、プロペラが回転し、RC飛行機は飛行できるようになるのです。 4ストロークと比較して、同じ排気量でも2ストロークのほうが最高出力は高く、扱いも簡単ですが、エンジンサウンドは4ストロークのほうがマイルドなため、スケール機マニアの方々は、2ストロークよりも4ストロークエンジンを好む場合が多くあります。③2ストロークグローエンジンの各パーツの役割を徹底解説!
シリンダーヘッド
シリンダーヘッドには多くの役割があります。ひとつは放熱、そして燃焼室に蓋をしての密閉の役割、さらに燃焼室の圧縮比の設定、そしてプラグの固定です。多くのシリンダーヘッドがフィン形状になっているのはもちろん放熱効果を高めるためで、シリンダーヘッドは燃焼室内での爆発の熱がダイレクトに伝わるため非常に熱くなります。それを冷却されるため、フィンの間に風を通し、そして放熱を効率良くおこなえるようにしています。一般的にはガソリンエンジンと比較するとグローエンジンの方がフィンが短いのは、燃料で冷やせるためです。また、あまりフィンを長くすると重量がかさんでしまうというデメリットもあります。 一方、シリンダーヘッドの裏側も非常に重要な部分となっており、このドームの形状によって圧縮比が変わるため、エンジンの性能や回転数に大きく関わってきます。さらに燃焼室の蓋の役割も担っており、圧縮が漏れないようにしっかりと密閉をする役割を担っています。クランクケース
エンジンそのものとなるクランクケース。周囲に取り付けられたフィンは、シリンダーヘッド同様、放熱効果を増やすために設けられています。クランクケースのサイズは、ライナーの入るサイズとストロークなどによって決まってきます。クランクシャフト
クランクシャフトには2つの役割があります。ひとつはピストンの上下運動を回転運動に変えてプロペラを回す役割。そしてもうひとつはクランクシャフトに設けられた吸気口によって、キャブレターから流入してきた混合気をクランクケース内に伝えるバルブの役割です。キャブレターから来た混合気は、クランクケースの1次圧縮を利用して吸入され、クランクシャフトを通じてクランクケースに入っていくようになります。 クランクシャフトの太さはエンジンのサイズによって異なります。大きなエンジンになれば燃料を吸い込む量も多くなり、クランクシャフトを太くしなくてはいけないが、太くなれば重量もかさむため、そのバランスが非常に難しくなります。シリンダーライナー
クランクケース内に収められており、この中をピストンとコンロッドが上下します。側面の穴はピストンが下がった際に、爆発した排気ガスが排気され、新しい混合気が流入する役割を持っており、この穴がピストンの上昇で塞がれると燃焼室内は密閉状態となります。圧縮が少しでも漏れてしまうと真空状態を作ることができなくなり、燃料が来なくなるため、エンジンは始動しなくなったり、アイドリングでもすぐに止まるようになってしまいます。 この穴も、燃料の流入量や排気量、入りやすさなどを考慮して設計されており、やや斜めにカットされるなど、細部まで計算しつくされたものとなっています。ピストンとコンロッド
ピストンはシリンダーライナー内を上下することによって、混合気を掃気、圧縮、爆発、排気させる役割を担っています。先に紹介したように、ピストンが下がると新しい混合気が吸入され、上がることで燃焼室が密閉空間となり、爆発した勢いで再び降下し、その際に排気と新しい混合気の吸入がおこなわれます。 このように2ストロークのグローエンジンにおいて、ピストンは非常に重要な役割を担っており、ここが焼き付いてしまったり、摩耗したりすると、エンジンはアイドリングが悪くなったり、始動さえしなくなってしまいます。 コンロッドはピストンの上下運動をクランクシャフトに伝える役割を担っており、エンジンが始動している時は常にこのパーツが激しく上下していることになります。キャブレター
タンクから来た燃料と空気を混合させてクランクケースに送り込む役割を担っているのがキャブレター。ただ単に混合させるだけでなく、燃料と空気を適切な量で混合させる機能を持っており、キャブレターの設定次第でエンジンの状態が決まってきます。 キャブレターの形状にはいくつかの種類がありますが、一般的にはドラム式とスライド式に分かれています。ドラム式はスロットルアームに連動する形で中のドラムが回転するもの。スライド式は横方向にスライドするものを指します。キャブレターが全閉になった場合、空気が取り込まれなくなり、エンジンは停止します。逆に全開になっていると多くの混合気がクランクケースに取り込まれ、回転数は高くなります。ニードル
キャブレターに取り付けられた針状の部品で、燃料の流入量を調整するためのアイテムです。ニードルを緩めると燃料が多く流入し、締めると燃料の流入は少なくなります。これによって、混合気の状態が変わり、燃料が多いと「濃い」状態となり、少ないと「薄い」状態となります。 ニードルの設定については、一般的にはアタリの出た状態からややニードルを開けた状態でセッティングすることが多くあります。「薄い」状態だとオーバーヒートしやすくなるため注意が必要です。カバープレート
クランクケース内の圧縮を保つための部品。使用されたカバープレートの内部をみると表面が摩耗したような跡がありますが、これはコンロッドが擦れてできたものです。プロペラを付けて回したエンジンは楕円のような跡ができます。ヌスミ加工されているのは内部でピストンが当たらないようにするためで、表側は軽量化するために肉抜きが施されていますドライブワッシャ
プロペラをドライブシャフトに取り付けるために必要なワッシャ。これにプロペラワッシャとプロペラナットを使ってプロペラを締めて取り付けることが多くあります。ドライブワッシャ。プロペラワッシャとプロペラナットとで、プロペラをドライブシャフトにしっかりと取り付けることが出来ます。
グロープラグ
プラグヒートによって通電するとフィラメントが赤熱し、クランクケース内の圧縮された混合気がグロープラグの余熱によって点火されることでエンジンは始動します。1度点火すると余熱で次の爆発が起こるのでプラグは赤熱し続けるため、プラグヒートは必要なくなります。
■④4ストロークグローエンジンの仕組み
前項で説明した2ストロークに続いて、ここでは4ストロークについても説明していきたいと思います。4ストロークは2ストロークと比べると構造が複雑で、その分、メカニカルな動きとなっており、模型好きにはたまらないものがあります。また、その独特のエンジンサウンドも魅力的なもので、特にスケール機マニアに支持されているエンジンです。4ストロークは、2ストロークがクランクシャフトが1回転する間に1回爆発するのに対し、2回転する間に1回爆発します。具体的な行程としては「吸入」「圧縮」「爆発」「排気」の4行程があり、この間にクランクシャフトは2回転するようになっています。
大きな違いは2ストロークがクランクケース内の圧縮を利用して、混合気を吸入、排気するのに対し、4ストロークはシリンダーヘッドに吸気と排気のバルブを搭載し、カムとプッシュロッドを使ってタイミングを合わせて開閉するようにすることで、混合気の吸引と排気をおこなっている点にあります。それでは、行程を詳細に見ていきましょう。
ピストンが下がっていく(1度目)と同時に吸気バルブが開き、キャブレターから混合気が燃焼室に入ってきます。次にピストンが反動で上昇してくる際に吸気バルブが閉じるので、燃焼室は密閉状態となります。密閉状態の中でピストンが上昇してくるので、混合気は圧縮され、プラグの熱によって点火し、爆発を起こします。その爆発の勢いで再びピストンは下がっていき(2度目)、次に上がって来る際に今度は排気バルブが開き、燃焼室内の排気ガスはピストンによって外部へ押し出されていく。これが4ストロークエンジンの一般的な仕組みとなっています。
では、排気と吸気のバルブはどのように制御されているのでしょうか。バルブはシリンダーヘッド内に収められたロッカーアームによって制御されています。このロッカーアームを制御しているのが2本のプッシュロッドであり、そのプッシュロッドを押し上げているのが、クランクシャフトに取り付けられたカムシャフトです。このカムシャフトには非対称のカムと呼ばれる突起部分があり、この突起がクランクシャフトが回転するごとにタイミングよくプッシュロッドを押し上げることでロッカーアームが動き、2つのバルブが開閉するようになっています。
4ストロークは重量が若干かさみますが、1回あたりの爆発が強いため中低速域でのトルクには優れています。最高出力は2ストロークには及ばないものの、トルクを活かしたスケールライクな飛びをするスケール機にはこういった理由もあり、よく用いられているエンジンとなっています。
シリンダーヘッド
4ストロークのシリンダーヘッドには、クランクケースの密閉、放熱、プラグの搭載といった2ストロークと同じ機能以外に、ロッカーアームや吸気、排気バルブの搭載という役割もあり、2ストロークと比較するとその構造は複雑なものとなっている。シリンダーヘッドの上部にはさらにロッカーアームを収めるロッカーカバーもあり、2ストロークと比べるとヘッドが高くなる傾向がある。クランクケース
4ストロークのクランクケースは2ストロークと比較するとプッシュロッドの穴が外部に用意されているのが大きな違いとなります。また、カムシャフトが入る部分も外部からも分かるようになっており、細部を比較すると2ストロークと異なる部分も多くありますクランクシャフト
4ストロークのクランクシャフトは、2ストロークにあった燃料を吸入する穴はありませんが、カムシャフトを取り付ける部分に歯車が用意されています。ここにカムシャフトを取り付けることで、タイミングよくプッシュロッドが押され、バルブが開閉するようになります。シリンダーライナー
2ストロークでは混合気の吸気や排気用の穴が側面にあったシリンダーライナーですが、4ストロークではその役割はバルブが担っているので、シリンダーライナーはシンプルにピストンが内部を上下するための筒状の部品となっています。