O.S.WEB MAGAZINE Vol.47
2022 July.2ストロークと4ストローク! グローエンジンの仕組みを知ろう!
2ストロークグローエンジンの仕組み
模型用エンジンとして幅広いユーザーに愛用されているグローエンジン。グローエンジンには2ストロークと4ストロークがありますが、今回はその構造の違いについて解説していきたいと思います。最初に2ストロークエンジンですが、2ストロークエンジンは構造がシンプルで部品点数も少なく、その分重量も軽いため、昔からRC飛行機やヘリで愛用されてきました。
2ストロークエンジンは次の4つの行程をクランクシャフトが1回転する間におこなわれます。最初に吸入、次に圧縮、そして爆発、排気と続きます。具体的には、ピストンが下がると混合気がクランクケースから燃焼室へ吸入されます。続いてピストンが上昇し、燃焼室が密閉状態となり、混合気は圧縮されます。圧縮された混合気はプラグの余熱で点火し、爆発を起こします。その爆発の勢いでピストンは降下し、掃気ポートと排気ポートが開くことで、新しい混合気が取り込まれ、同時に排気ガスが外部へ排気されます。これを繰り返すことでエンジンは爆発し続け、ピストンの上下運動がクランクシャフトによって回転運動となりプロペラを回転することで、RC飛行機は飛行できるようになります。
2ストロークは同じ排気量の4ストロークよりも最高出力が高く、扱いも簡単ですが、エンジンサウンドは4ストロークのほうがマイルドで実機に近い音質なため、スケール機マニアは4ストロークを選択するユーザーが多いです。





シリンダーヘッド
シリンダーヘッドには多くの役割があります。ひとつは放熱、そして燃焼室に蓋をして密閉する役割、さらに燃焼室の圧縮比の設定、そしてプラグの固定です。多くのシリンダーヘッドがフィン形状になっているのはもちろん放熱効果を高めるためです。シリンダーヘッドには燃焼室内での爆発の熱がダイレクトに伝わるため非常に熱くなります。それを冷却するために、フィンの間に風を通しが効率良くこなわれるようにしています。一般的にはガソリンエンジンと比較するとグローエンジンのフィンの方が短いのは、グロー燃料の主成分である「メタノール」で冷却が可能だからです。また、あまりフィンを長くすると重量がかさんでしまうというデメリットもあります。一方、シリンダーヘッドの裏側も非常に重要な部分となっており、このドームの形状によって圧縮比が変わるため、エンジンの性能や回転数に大きく関わってきます。さらに燃焼室の蓋の役割も担っており、圧縮が漏れないようにしっかりと密閉をする役割も担っています。


クランクケース
エンジンそのものとなるクランクケース。周囲に取り付けられたフィンは、シリンダーヘッド同様、放熱効果を高めるために設けられています。クランクケースのサイズは、ライナーの入るサイズとストロークなどによって決まってきます。
クランクシャフト
クランクシャフトには2つの役割があります。ひとつはピストンの上下運動を回転運動に変えてプロペラを回す役割。そしてもうひとつはクランクシャフトに設けられた吸気口が、キャブレターから流入してきた混合気をクランクケース内に伝えるバルブの役割を担います。キャブレターから来た混合気は、クランクケースの1次圧縮を利用して吸入され、クランクシャフトを通じてクランクケース吸入されます。クランクシャフトの太さはエンジンのサイズによって変わってきます。大きなエンジンになれば燃料の吸入量も多くなり、クランクシャフトを太くしなくてはなりませんが、太くなれば重量もかさむため、そのバランスが非常に難しくなります。


シリンダーライナー
クランクケース内に収められており、この中をピストンとコンロッドが上下します。側面の穴はピストンが下がった際に、爆発した排気ガスが排気され、新しい混合気が流入する役割を持っており、この穴がピストンの上昇で塞がれると燃焼室内は密閉状態となります。圧縮が少しでも漏れてしまうと真空状態を作ることができなくなり、燃料が来なくなるため、アイドリングや回転が続かなくなり、最悪の場合エンジンが始動出来なくなります。この穴も、燃料の流入量や排気量、入りやすさなどを考慮して設計されており、やや斜めにカットされるなど、細部まで計算しつくされたものとなっています。

ピストンとコンロッド
ピストンはシリンダーライナー内を上下することによって、混合気を掃気、圧縮、爆発、排気させる役割を担っています。先に紹介したように、ピストンが下がると新しい混合気が吸入され、上がることで燃焼室が密閉空間となり、爆発した勢いで再び降下し、その際に排気と新しい混合気の吸入がおこなわれます。このように2ストロークのグローエンジンにおいて、ピストンは非常に重要な役割を担っており、ここが焼き付いてしまったり、摩耗したりすると、エンジンはアイドリングが悪くなったり、始動さえしなくなってしまいます。
コンロッドはピストンの上下運動をクランクシャフトに伝える役割を担っており、エンジンが始動している時は常にこのパーツが激しく上下していることとなります。

キャブレター
タンクから来た燃料と空気を混合させてクランクケースに送り込む役割を担っているのがキャブレター。ただ単に混合させるだけでなく、燃料と空気を適切な量で混合させる機能を持っており、キャブレターの設定次第でエンジンの状態が決まってきます。キャブレターの形状にはいくつかの種類があるが、一般的にはドラム式とスライド式に分かれています。ドラム式はスロットルアームに連動する形で中のドラムが回転するもの。スライド式は横方向にスライドするものを指します。キャブレターが全閉になった場合、空気が取り込まれなくなり、エンジンは停止する。逆に全開になっていると多くの混合気がクランクケースに取り込まれ、回転数は高くなります。



ニードル
キャブレターに取り付けられた針状の部品で、燃料の流入量を調整するためのもの。ニードルを緩めると燃料が多く流入し、締めると燃料の流入は少なくなります。これによって、混合気の状態が変わり、燃料が多いと「濃い」状態となり、少ないと「薄い」状態となります。ニードルの設定は、一般的にはアタリの出た状態からややニードルを開けた状態でセッティングすることが多いです。「薄い」状態だとオーバーヒートしやすくなるため注意が必要です。

カバープレート
クランクケース内の圧縮を保つための部品。使用されたカバープレートの内部をみると表面が摩耗したような跡がありますが、これはコンロッドが擦れてできたものです。プロペラを付けて回したエンジンは楕円のような跡ができます。ヌスミ加工されているのは内部でピストンが当たらないようにするため。表側は軽量化するために肉抜きが施されています。
ドライブワッシャ
プロペラをドライブシャフトに取り付けるために必要なワッシャ。これにプロペラワッシャとプロペラナットを使ってプロペラを締めて取り付けることが多く見られます。
グロープラグ
プラグヒートによって通電するとフィラメントが赤熱し、クランクケース内の圧縮された混合気がグロープラグの余熱によって点火されることでエンジンは始動します。1度点火すると余熱で次の爆発が起こるのでプラグは赤熱し続けるため、プラグヒートは必要なくなります。
4ストロークエンジンの仕組み
マイルドなサウンドとメカニカルな構造でマニアから人気の4ストロークエンジン!独特の構造を持つ4ストローク
前項で説明した2ストロークに続いて、ここでは4ストロークについても説明していきたいと思います。4ストロークは2ストロークと比べると構造が複雑で、その分、メカニカルな動きとなっており、模型好きにはたまらないものがあります。また、その独特のエンジンサウンドも魅力的なもので、特にスケール機マニアに支持されているエンジンです。4ストロークは、クランクシャフトが1回転する間に1回爆発する2ストロークのに対し、2回転する間に1回爆発する。具体的な行程としては「吸入」「圧縮」「爆発」「排気」の4行程があり、この間にクランクシャフトは2回転するようになっています。
大きな違いは2ストロークがクランクケース内の圧縮を利用して、混合気を吸入、排気するのに対し、4ストロークはシリンダーヘッドに吸気と排気のバルブを搭載し、カムとプッシュロッドを使ってタイミングを合わせて開閉するようにすることで、混合気の吸引と排気をおこなっている点にあります。
行程の詳細を見ていきましょう。ピストンが下がっていく(1度目)と同時に吸気バルブが開き、キャブレターから混合気が燃焼室に入ってくる。次にピストンが反動で上昇してくる際に吸気バルブが閉じるので、燃焼室は密閉状態となります。密閉状態の中でピストンが上昇してくるので、混合気は圧縮され、プラグの熱によって点火し、爆発を起こします。その爆発の勢いで再びピストンは下がっていき(2度目)、次に上がってくる際に今度は排気バルブが開き、燃焼室内の排気ガスはピストンによって外部へ押し出されていきます。これが4ストロークエンジンの仕組みとなっています。
では、排気と吸気のバルブはどのように制御されているのでしょうか。バルブはシリンダーヘッド内に収められたロッカーアームによって制御されています。このロッカーアームを制御しているのが2本のプッシュロッドであり、そのプッシュロッドを押し上げているのが、クランクシャフトに取り付けられたカムシャフトです。このカムシャフトには非対称のカムと呼ばれる突起部分があり、この突起がクランクシャフトが回転するごとにタイミングよくプッシュロッドを押し上げることでロッカーアームが動き、2つのバルブが開閉するようになっています。
4ストロークは重量がかさむが、1回あたりの爆発が強いため中低速域でのトルクには優れています。最高出力は2ストロークには及ばないものの、トルクを活かしたスケールライクな飛びをするスケール機にはこういった理由もあり、よく用いられているエンジンです。






シリンダーヘッド
4ストロークのシリンダーヘッドには、クランクケースの密閉、放熱、プラグの搭載といった2ストロークと同じ機能以外に、ロッカーアームや吸気、排気バルブの搭載という役割もあり、2ストロークと比較するとその構造は複雑なものとなっています。シリンダーヘッドの上部にはさらにロッカーアームを収めるロッカーカバーもあり、2ストロークと比べるとヘッドが高くなる傾向があります。

クランクケース
4ストロークのクランクケースは2ストロークと比較するとプッシュロッドの穴が外部に用意されているのが大きな違いとなります。また、カムシャフトが入る部分も外部からも分かるようになっており、細部を比較すると2ストロークと異なる部分も多くあります。
クランクシャフト
4ストロークのクランクシャフトは、2ストロークにあった燃料を吸入する穴はありませんが、カムシャフトを取り付ける部分に歯車が用意されています。ここにカムシャフトを取り付けることで、タイミングよくプッシュロッドが押され、バルブが開閉するようになります。
シリンダーライナー
2ストロークでは混合気の吸気や排気用の穴が側面にあったシリンダーライナーですが、4ストロークではその役割はバルブが担っているので、シリンダーライナーはシンプルにピストンが内部を上下するための筒状の部品となっています。
ピストンとコンロッド
2ストローク同様、シリンダーライナーの中を上下に激しく動き回るピストンとコンロッド。4ストロークではピストンが上下運動を2回繰り返す中で、吸気と排気がおこなわれます。形状は2ストロークと大きな違いはなく、爆発によって上下する動きをコンロッドがクランクシャフトに伝え、それが回転運動となってプロペラが回転するようになる点は2ストロークも4ストロークも変わりません。
カムシャフト
4ストローク独特の部品であるカムシャフト。クランクシャフトの途中に取り付けられ、カムと呼ばれる非対称の突起が設けられています。これは、クランクシャフトが回転するとカムシャフトも回転し、カムの部分が回転ごとにカムフォロアを通じてプッシュロッドに接触し押し上げる。これによってタイミングよく、プッシュロッドが上がり、ロッカーアームが動き、吸気と排気のバブルが開閉するようになります。4ストロークはクランクシャフトが2回転する間に、バルブはそれぞれ1回開閉するため、このカムシャフトによって減速をおこなっています。4ストロークエンジンの中でも非常に重要な部品で、このカムの絶妙な突起によってバブルの開閉が制御されています。

ロッカーアーム
シリンダーヘッドの上、ロッカーカバーに覆われた中にあるのがロッカーアーム。吸気と排気のバルブを開閉する仕組みを担っており、プッシュロッドによって押し上げられると、シーソーのようにロッカーアームを介してバブルが開くようになります。このオーバーヘッドバルブ方式(OHV方式)は、4ストロークでもスタンダードなものであり、構造は複雑ですが、非常に理にかなっている仕組みであります。
プッシュロッドとプッシュロッドカバー
カムシャフトによって押し上げられ、ロッカーアームに伝え、バルブの開閉を担うプッシュロッド。クランクケースの外部に取り付けられることが多く、最近の4ストロークではロッドの周囲をカバーで覆っています。このプッシュロッドがカムシャフトのカムによって上部に押し上げられることで、タイミングよくバルブを開閉することができるようになっています。
バルブ
4ストロークの要となるバルブ。吸気バルブが開くことで混合気が取り込まれ、閉じることで密閉状態を作り出し、混合気に点火され爆発を起こします。次にピストンが爆発の影響で下がり、反動で上がってくる時に排気バルブが開き、燃焼室内の排気が外部へ排気されます。このバルブに不具合があると、密閉状態が作れなくなり、アイドリングや回転が続かなくなり、最悪の場合エンジンが始動出来なくなります。