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O.S.WEB MAGAZINE Vol.30

2021.Jan-Feb

エンジン飛行機を始めたい人必見! グローエンジンと周辺アイテムの基礎知識

ブラシレスモーターとリポバッテリーの進化によって、ラジコン飛行機における電動機の割合はこの10年で大きく伸びました。一方、昔ながらの模型用エンジンも電動機という比較対象ができたことで、その良さが再認識され、初心者からベテランフライヤーまで、幅広い層に愛されてきました。エンジン飛行機の良さは、何と言っても模型用エンジンという内燃機関を扱う楽しさと、そのサウンドではないでしょうか。しっかりと調整の施されたエンジンは快適な飛行を約束してくれますし、大空に響き渡るエンジンサウンドは何ものにも代えがたい魅力を持っています。 最近では電動機で入門したけれど、見ているうちにエンジン機も飛ばしたくなったという方も多いようです。そこで今回はグローエンジンの基礎知識を紹介していきたいと思います。どれもエンジン機を扱う上で基礎となるものばかりですので、ぜひこの機会に覚えて頂ければと思います。

グローエンジンが搭載されたエンジン飛行機。エンジン機には、電動機では味わえないさまざまな魅力が凝縮されています。


基礎知識①:グローエンジンとは

「グローエンジン」とは、点火栓としてスパークプラグではなく、赤熱するヒーターをもつ「グロープラグ」を使用しているエンジンで、始動時のみプラグに通電してヒーターコイルを赤熱させ、一旦始動してしまえばプラグへの通電を外しても、シリンダー内の燃焼爆発による熱でヒーターの赤熱状態を保ち、焼玉エンジンと同じように次の点火を誘発して運転を持続するエンジンです。 グローエンジンの大きさは、シリンダー内の排気量で区別されています。その単位は立方インチで表現され、呼び方は10「イチマル」(0.10立方インチ)、20「ニーマル」(0.20立方インチ)、というように呼ばれ、60「ロクマル」(0.60立方インチ)でおおよそ10ccの排気量となり、120「ヒャクニジュウ」でおよそ20ccの排気量のエンジンとなります。 一般的にラジコン飛行機の大きさは、その機体に適合するグローエンジンの大きさで呼ばれることが多く、50クラスや90クラスといったような呼び方をされることが多くあります。

グローエンジン。構造も単純で扱いやすく、古くから模型用エンジンとして使用され、小型機から大型機まで、現在でも世界中のフライヤーによって愛用され続けています。

グローエンジンが搭載されたエンジン飛行機。青空に響き渡るエンジンサウンドは、一度知ってしまうと病みつきになるような魅力があります。

基礎知識②:グローエンジンの種類

グローエンジンには、2ストロークエンジンと4ストロークエンジンの2種類のエンジンがあり、その出力特性や排気音は大きく異なります。40年以上前の時代には、グローエンジンは構造が単純で重量の軽い2ストロークエンジンが主流でしたが、4ストロークエンジンの開発をおこなわれ、現在ではパワー的にも遜色がなく、マイルドな排気音で音量が低い4ストロークエンジンも多くのフライヤーに使われるようになりました。 2ストロークエンジンと4ストロークエンジンの大きな相違点として、2ストロークエンジンの動作工程が、①吸入→②圧縮・点火→③膨張→④排気・掃気の4つの工程をクランクシャフトが1回転する間におこなっているのに対し、4ストロークエンジンの場合には、①吸入→②圧縮→③爆発→④排気の4つの工程を、クランクシャフトが2回転する間におこなっている点にあります。つまり、2ストロークエンジンでは1回転に1回爆発するのに対し、4ストロークエンジンでは2回転に1回の爆発しかしていないことになります。 2ストロークエンジンでは、クランクケース内の圧力変化を利用して給排気するため、クランクシャフトに開けられた穴や、給気口に取り付けられた板状のリードバルブを吸気バルブとし、ピストンが下がると開くシリンダー側壁の穴を掃、排気口としているのに対し、4ストロークエンジンではシリンダーヘッドに吸、排気バルブを設け、クランクシャフトの回転を機械的にカムとプッシュロッドを通じてロッカーアームに伝え、タイミングよくバルブを開閉するいわゆるOHV方式が多く用いられています。 模型用エンジンとして、複雑な機構を持たないために重量が軽く、1回転ごとに爆発する2ストロークエンジンは昔から広く使用されており、比較的安価で高出力を得ることができます。これに対し、4ストロークエンジンは構造が複雑なため、重量は重いが1回ごとの爆発力が強いため、中低速回転でのトルクが大きくなります。 最高出力の数値だけ比較した場合には、同じ排気量のエンジンであれば、2ストロークエンジンの方が4ストロークエンジンよりもパワーがありますが、模型用エンジンとしてのメリットを考えると、必ずしもパワーだけではなく、マイルドなエンジン音とトルクのある出力特性、メカニカルな部分などが好まれる傾向にあります。スタント機だけではなく、スケール機の分野でも、より実機の音に近い4ストロークエンジンを好む方も多くいらっしゃいます。 また、グローエンジンには2ストローク、4ストロークだけでなく、水平対向、直列、星形など多気筒のものも発売されています。自分のフライトスタイルや機体のタイプに合わせて、さまざまなラインナップから好きなエンジンを選ぶことが可能となっています。

2ストロークエンジンの構造。複雑な部分がなく構造が単純なため、小型エンジンでも実用性のあるものを製作することが可能である。

4ストロークエンジンの構造。シリンダー上部にバルブがあり、クランクシャフト前方にはバルブを動かすためのカムシャフトを回すギヤが見える。

基礎知識③:グロー燃料

飛行機に搭載するグローエンジンは、小型で軽量であることが必要なため、構造は単純化されており、燃料にあらかじめ潤滑油を混ぜて運転し、燃料中の油分でエンジン各部を潤滑する混合燃料方式となっています。 グローエンジンに使用する燃料には、主成分としてメチルアルコール(メタノール)が使用されている。これに潤滑油として古くから使用されているひまし油や化学合成オイルなどが15~25%程度混合されており、さらに燃焼効率を上げるために、ニトロメタンなどの添加剤を10~35%程度加えたものが使用されています。 ニトロメタンなど、添加剤はその含有率が多いほど、エンジンのパワーは大きくなり、ニードル位置も開いて混合気は濃い状態となるため、エンジンの冷却にも効果がありますが、ニトロが燃焼すると酸性のガスが発生するため、エンジン内部のサビの誘発しますので、やたらニトロの含有率を増やすべきではありません。グロー燃料のニトロ含有率は、通常の飛行であればニトロは20%以下のものが主流となります。
詳しくは→グロー燃料の秘密(NITRO-X SITE)を参照してください。

飛行するグローエンジン搭載機。グローエンジンには、燃料としてガソリンではなく、メチルアルコール(メタノール)が使用されます。

グロー燃料には、主成分となるメチルアルコールに、潤滑油として化学合成オイルが15~25%程度混合されており、さらに燃焼効率を上げるために、ニトロメタンなどの添加剤を10~35%程度加えたものが使用されています。写真はO.S.が発売しているグロー燃料「NITRO-X」で、飛行機用とヘリ用でさまざまな種類を用意しています

基礎知識④:グロープラグ 

グローエンジンという名前の起源ともなっているグロープラグは、他のエンジンと同様にシリンダー内で圧縮された混合気に着火させるための点火装置ですが、自動車やオートバイに使用されているガソリンエンジンのスパークプラグとはまったく違う方式の点火栓です。 グロープラグは、ガソリンエンジンのスパークプラグのように、点火タイミングを電気的に変えることができないため、プラグの熱価によって微妙な点火タイミングの調節をおこなっています。グロープラグには、赤熱させるフィラメントの種類や太さにより、「ホット」、「ミディアム」、「コールド」といった種類があり、エンジンの性質や燃料の特性により、熱価の違うプラグを使い分けする必要があります。 スパークプラグと比較して、単純な構造のグロープラグですが、グローエンジンの持っているパワーをフルに引き出すために、エンジンや燃料など最適なタイミングでの点火となるように、シーンに合った熱価のものを選ぶことが重要です。

グロープラグは、中央の赤熱するコイル部分に白金が使用されています。O.S.ではホット、ミディアム、コールドと熱価の異なるグロープラグを用意しています。

グローエンジンの持っているパワーをフルに引き出すために、グロープラグは重要な役割をもっており、燃料や状況に合ったプラグを選ぶことが重要です。

基礎知識⑤:グローエンジンの始動用具

グローエンジンを始動するためには、エンジンの始動用具が必要となります。 始動用具として、まず必要となるのが機体に燃料を給油するための燃料ポンプです。数百㏄の燃料タンクを搭載しているRC飛行機の場合には燃料ポンプは必需品です。燃料ポンプには、電動式や手回し式のものがありますので、大型機の場合には電動を、小型機の場合には手回し式といったように、用途と好みによって選べば良いでしょう。注意すべき点としては燃料の種類で、グロー燃料の油種に対してポンプが適合しているかを確認しておきましょう。また、燃料を送るパイプも同様で、グロー燃料であればシリコンチューブを、ガソリン用であればビニール製やネオプレンゴムのものを使用する必要があります。また燃料缶内部の沈殿物を取り除く「O.S.スーパーフィルター」を装着すると、燃料タンクににきれいな燃料を入れることが出来ます。 次に、グローエンジンの始動に欠かせないのがプラグヒートです。最近では電源の種類もさまざまなものがあり、12ボルトバッテリーやリポバッテリーから電源を取るものや、充電式電池を使用するポケットブースター、通電の状況やオーバーチョークなどプラグの状態が一目でわかるパルス式のものなどが各メーカーによって販売されていますので、自分のスタイルに合わせたものを選ぶようにしましょう。 そして、エンジン始動用の電動スターターも必須アイテムになります。最近ではバッテリーの進化によって電源は鉛バッテリーからニッカドへと変わり、さらにリチウムポリマーへと進化しました。コンパクトなバッテリー式のスターターでもほとんどのサイズのエンジンを始動することが可能となっているようになっていますので、こちらも大きなエンジンまで回しきれるようなものをひとつ用意しておくと良いでしょう。 多くのフライヤーは、これらの燃料ポンプ、プラグヒート、電動スターターに加え、プラグレンチなど手工具をひとつにまとめて、始動用具として持ち運べるようにしておくのが一般的です。

グローエンジンを始動させるためには、燃料、ポンプ、プラグヒート、電動スターターや電源となるバッテリーのほか、プラグレンチなどの手工具等も必要となります。

グロー燃料を給油するためには燃料ポンプが必要です。手動や電動式のポンプがあり、好みや機体の大きさによって使い分けることが可能です。

基礎知識⑥:燃料タンク

エンジン飛行機に搭載する燃料タンクは、搭載するグローエンジンの大きさによって、その燃料消費量からおおよその容量が決まってきます。機体の種類や飛行目的によって大きさや搭載位置は変わるものですが、飛行機の場合、1回の飛行時間を約10~15分程度と想定すると、10~20クラスのエンジンでおおむね100cc、25~35クラスで200cc、50~60クラスで350cc、90~120クラスで600cc、180~200クラスで1000cc前後のタンクを搭載することとなります(※あくまで目安です)。 グローエンジンに使用される燃料タンクの構造は、燃料に侵されることのないポリエチレン樹脂系のタンク本体に、耐油製ゴムキャップ、ゴムキャップを貫通するアルミパイプ、配管用シリコンチューブなどにより構成され、エンジンへと接続する燃料供給パイプの先端には、機体がどんな姿勢になってもつねに燃料を吸い込むことができるように、タンク用オモリが取り付けられています。O.S.では姿勢変化によりタンク内の燃料に発生する泡を吸い込みにくくする燃料タンクおもり「バブレス・ウエイト」をご用意しています。 燃料タンクの配管は、基本的にタンクに燃料を入れる給油パイプ、タンクから燃料を取り出し、エンジンへと供給する供給用パイプ、燃料の液面の変化に応じて外気を出し入れする通気用パイプの3本が必要となります。タンク内部では、給油用パイプはタンク底面近くに、通気用パイプはタンク天井部に導き、給油時に通気用パイプからあふれ出ることで、燃料が満タンになったことがわかるように配管します。 燃料タンクからエンジンへの配管については、燃料ポンプを持たないグローエンジンの場合には、マフラーにニップルを取り付けて通気用パイプに接続し、その排気圧をタンク内に導いて燃料供給を安定させる「マフラープレッシャー」方式が多く利用されます。 また、吸い込み式燃料ポンプを持つエンジンの場合には、通気パイプは解放しておく必要があり、加圧式ポンプを持つエンジンの場合には、マフラープレッシャーよりも高い圧力でタンク内に加圧されることとなりますので、タンクの機密性を確実にすることが重要です。このように、エンジンへの燃料配管は、その形式によって異なるため、使用するエンジンの取扱説明書に従って正確に配管するようにしましょう。

燃料タンクの内部。キャップをタンクに取り付けて、給油用パイプはタンク底面近くに、通気用パイプはタンク天井部に導き、給油時に燃料が通気用パイプから出れば満タンになったことがわかるように配管します。

マフラープレッシャー方式の場合には、マフラーにニップルを取り付けて通気用パイプに接続し、その排気圧をタンク内に導いて燃料供給を安定させます。

吸い込み式燃料ポンプを持つエンジンの場合には、給油パイプに栓をして通気パイプは開放しておきます。

まとめ

今回は、グローエンジンとエンジン飛行機を飛ばす上で必要なアイテムの基礎知識を紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?エンジン機は電動機と比べて手間ヒマをかける必要がありますが、それもエンジン機を扱う楽しみのひとつです。エンジン機に挑戦してみたいと考えている方は、ぜひこの機会にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?


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