O.S.WEB MAGAZINE Vol.46
2022 June.歴史を刻んだO.S.ENGINE (特別編 多気筒化の夢)
O.S.エンジンにおいて、多気筒エンジンの歴史は1938年、創業直後に小川重夫自らプロトタイプとして製作したMARINEエンジンがその第一号です。

OSマリーン
その後、41年目にして完成したのが1979年から発売されたFT-120ジェミニと呼ばれる水平対向2気筒4ストロークエンジン。とはいえ、このFT-120ジェミニの開発の始まりが、実質、O.S.エンジンの多気筒エンジンの始まりといっていいでしょう。
FT-120(ジェミニ)
4ストロークエンジンFS-60では、排気音のスケール化が図られたわけですが、このFT-120ジェミニでは、“エンジンそのもののスケール化を”ということが命題でした。よりスケール感を出すため、カムシャフトをクランクシャフトの下側に配置したりするなどの工夫がなされていました。とはいえ、このエンジンの魅力は独特の排気音であり、アンバラスさは否めないものの、トルク変動と振動の少ないスムーズな回転により、多くのマニアの心をつかみ、当時、生産が追いつかないほどでした。そしてここから、O.S.が誇る機能美あふれる多気筒エンジンが展開されました。 その最たる代表作が、FR5-300/シリウスです。 形作られたその造形美、そして集約された技術力。見たものが思わず溜息をも洩らしそうなそのエンジンが、姿を現したのは1986年。時は経ち、それから36年の歳月が流れても、その魅力は、色褪せることはありません。

FR5-300(シリウス)
クランクシャフトにメインとなる1気筒分のコンロッドが連結され、そのメインコンロッドに残り4気筒分のサブコンロッドが取り付けられるというメカニズム。ゆえに一番シリンダー用のコンロッドは非常に大きいのが特徴といえます。また、吸排気をコントロールするカムは、クランクシャフトと同軸上にリング状カムを配し、クランクシャフトの回転を1/6にギヤダウンしています。



もっとも、このFR5-300/シリウスのすばらしさは、このようなメカニカルな部分だけでなく、出力特性やそのサウンドなどといった、星型エンジンならではのものといえるでしよう。 FR5-300で得た星形エンジンのノウハウは2010年に発売された星形7気筒エンジンFR7-420へ継承されました。

FR7-420(シリウス7)

また、存在感溢れるボディフォルムと、製作された物語において、星型エンジンにも匹敵するほどのインパクトを持っているのが、2006年に小川精機70周年のアニバーサリーエンジンとして発売された直列4気筒エンジンIL-300でした。故小川重夫会長と関西模型クラブ連合会の会長である大谷演慧氏との約束を果たすため開発されたエンジンでした。アンティックな雰囲気を醸し出すそのスタイリングには、O.S.エンジン唯一の直4エンジンとして、誇りさえ感じられました。

IL-300<ダイヤ・スター>
もっとも、O.S.が誇る多気筒エンジンのラインナップで忘れてはいけないのが、先に紹介したFT-120ジェミニから連なる水平対向エンジンです。好評を得たFT-120ジェミニから引き続き、よりこの2気筒4ストロークFTシリーズの充実を計ったのが1984年でした。FAIのスケール規定に合わせたFT-120II(ジェミニII)、マウントサイズを共通としながらも、ひと回り大きな行程体積を擁するFT-160(ジェミニ160)、そしてクォータースケール用のFT-240(スーパー・ジェミニ)といったジェミニシリーズと呼ばれる、水平対向2気筒エンジン三機種が登場しました。これらはFT-120ジェミニの発展型として、クランクシャフト、コンロッド回りの強化、混合気の左右シリンダーへの分配などの改良がされており、モアパワーかつ安定性の向上がなされています。その後、FT-240からFT-300(スーパー・ジェミニ300)へと移行しました。また、水平対向2気筒と同時に開発が進められたのが、水平対向4気筒エンジンです。ペガサスと呼ばれるFF-240は、現在ではFF-320に受け継がれていますが、そのトルクフルな出力特性による扱いやすさとともに、奏でられるエンジンサウンドは特筆モノといえ、多くのフライヤーを魅了しています。

FF-320<ペガサス320>
また.2018年に登場したガソリンエンジン水平対抗2気筒GT120TはBIGスケールのアクロ機をダイナミックにフライトさせる事のできるエンジンとしてマニアの注目を集めました、また産業機器用UAVエンジンの分野でも活躍を続けています。

UAV用エンジンGT120THU
トルクフルな出力特性はもちろんのこと、味わい深い造詣、技術が集約されたメカニズム、そしてスケール感漂うサウンドなど、マニアの心をつかんで離さないだけの数多い魅力が、多気筒エンジンにはあります。
次回へ続く
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