O.S.WEB MAGAZINE Vol.28

O.S.WEB MAGAZINE Vol.28 2020 Nov.-Dec.

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産業用ドローンの課題を解決! O.S.PROFESSIONAL注目の新製品紹介!

O.S.新製品情報:2020/11

産業用ドローンの課題を解決! O.S.PROFESSIONAL注目の新製品紹介!

O.S.の産業用UAV/ドローン用動力源のブランド「O.S.PROFESSIONAL」では、産業用途のドローンが抱えるさまざまな課題を解決すべく、O.S.がこれまで模型用エンジンやモーターなどで培ってきた経験を元に、多くの画期的な製品をリリースしています。 そんなO.S.PROFESSIONALの製品ラインナップに、新たに2つの製品が加わりました。今回はそんな新製品「GF80TU-FI」と「GT33REUレンジエクステンダー」について、小川精機株式会社 産業機器開発部 部長 三浦健二と副課長 山口敏之の両名に聞いていきたいと思います。

UAV向け4ストローク 2気筒エンジン「GT80TU-FI」


編集部:
まずは、「GF80TU-FI」の概要について教えてください。
山口:
「GF80TU-FI」は、UAV向けの電子制御燃料噴射装置付き空冷4ストローク2気筒80ccエンジンです。エンジンの後部に200Wクラスの発電機を搭載し、32ビットCPUを搭載したECU(エンジンコントロールユニット)でエンジンのマネージメントができるようになっています。また、電子制御の燃料噴射システムを搭載しています。
編集部:
「GF80TU-FI」を開発するに至った経緯を教えてください。
山口:
O.S.PROFESSIONALでは、これまでUAV用の4ストロークの40ccエンジン「GF40U-FI」を開発し発売してきましたが、より排気量の大きいものを第二弾として考えておりました。これはマーケットのニーズとして、UAVのペイロードを考えた時に、もっと大きな排気量のエンジンを求められたためです。最近ではUAVに搭載する機材が大型化したり、種類が大きくなっていることから、40ccではパワー不足になってきていました。そこで完成したのが「GF80TU-FI」になります。これは従来の「GF40U-FI」を2気筒にしたもので、共通部品も使えることから開発期間の短縮につなげることができました。
編集部:
GF80TU-FI」の特徴はどういったところでしょうか?
山口:
この製品は、エンジンの後部に発電機を搭載していまして、これがスターターの役割も担っています。また点火だけでなく、UAVに搭載されているカメラや舵といった機器類の電力すべてをこの発電機でまかなえるところも特徴です。例えばこのエンジンは燃料噴射装置が付いていますのでその噴射や、ECU(エンジンコントロールユニット)、フライトコントローラー、舵のサーボ、カメラやジンバル、農薬散布の機器などさまざまな機器の電力源として使うことができます。逆にそれらをまかなうために、200Wクラスの発電機が必要ということで搭載することにしました。 さらに、エンジンコントロールユニット「EC-13ECU」を使うことでエンジンの回転数やシリンダーヘッド温度、スロットル開度、大気圧などをシリアル通信やCANを使うことで、リアルタイムでエンジンの状況を数値で把握することができるようになっています。 そして、水平対向エンジンですので2つのエンジンが振動を打ち消しあうことで振動を抑えることに成功しています。UAVとしてはカメラやフライトコントローラー含め少しでも振動は少ないほうが良いですので、これも大きな特徴だと思います。
編集部:
開発される際に特にこだわったところはどこでしょうか?
山口
今回のエンジンは2気筒ですので、新しい試みとしてクランク室圧過給方式をこれはクランク室の容積の変化を利用して過給するもので、4ストロークエンジンの低燃費で、2ストロークエンジン並みの高出力を引き出すことに成功しています。2気筒になって重たくなった分、プラスアルファのパワーが必要と考えて採用した新しい試みです。 また、電子制御燃料噴射装置を搭載していますが、これは高高度での運用を可能にするためです。気圧によって高度補正をおこなうことが可能で、標高3000mでも使用できるようになっています。キャブレターですと、3000mまでいくと燃料が濃くなってしまったりしてしまうのですが、電子制御燃料噴射装置を搭載したことで常に安定した燃料の供給を実現しています。 産業用ドローンの世界では、従来の弊社のお客様のようにラジコンや模型用エンジンに詳しい方ばかりではありません。そこでどなたに使って頂いても同じような性能が出るように電子制御燃料噴射装置を搭載したりしています。
山口:
今回の「GF80TU-FI」ではエンジンの掛け方にも工夫をしています。4ストロークエンジンですのでどうしても2ストロークエンジンよりも圧縮が高くなります。そのため、セルスターターでいったん反対側にエンジンを回して反対側の圧縮をかけ、そこから勢いを付けて正転をかけるような仕組みを採用しています。これだけ大きいエンジンですのでエンジンをかけるのにトルクが必要なのですが、圧縮がかかった状態ですと起動トルクが非常に高くなります。となりますと、もっと大きなモーターが必要になってきますが、あまりモーターは大きくしたくない。そこで一度反対側まで確実に圧縮をあててからポンピングも使って一気に回す方法を考えました。
編集部:
「GF80TU-FI」はどのような使われ方を想定していますでしょうか。
山口:
おかげさまで弊社Webサイトで発表して以来、多くのお問い合わせを頂いております。また既に納品したものでは、観測用の翼長3mクラスの固定翼UAVに搭載されております。低燃費かつ上空での信頼性、そして扱いやすさという点で、さまざまな用途のUAVに搭載して頂ければと思います。
■GT80TU-FIスペック■
形式:空冷4ストローク2気筒OHVエンジン
行程体積:79.92cc(39.96cc×2)
ボア×ストローク:40mm×31.8mm
重量:3.4kg(エンジンのみ)
燃料:オイル混合レギュラーガソリン
燃料供給装置型式:電子制御燃料噴射装置
点火方式:CDI方式バッテリー点火
点火プラグ:M10mmスパークプラグ(CM-6タイプ)

ドローンの飛行時間を飛躍的に伸ばす 「GT33REUレンジエクステンダー」

編集部:
次に「GT33REUレンジエクステンダー」について教えてください。まずはこちらの製品の紹介をお願いします。
三浦:
この「GT33REUレンジエクステンダー」は、ドローンの飛行時間を延長するために、動力電源供給用にドローンに搭載可能な発電機として開発しました。この発電機はセルスターターが発電機と一体型となっており、それにより軽量化に成功しています。また、O.S.PROFESSIONALの製品である「EM-100」エンジンマネジメントシステムと組み合わせることで、ガバナ機能を使って負荷変動に対するエンジンコントロールを自動化することに成功しています。 実際にこの「GT33REUレンジエクステンダー」をドローンに搭載して飛ばしたのですが、11時間連続の飛行に成功しました。低燃費かつ信頼性の高いユニットであることを証明できたと思います。



O.S.YouTubeチャンネルで11時間連続飛行の模様を公開中
編集部:
この「GT33REUレンジエクステンダー」を開発するきっかけはどういったところにあったのでしょうか?
三浦:
きっかけはお客様からのご要望です。海外のショーなどを見ると3年前くらいから同じような製品は存在していたのですが、弊社のようなエンジンメーカーやモーターメーカーの視点で見るとどれもひとつふたつ足りないものばかりでした。そんな弊社のことをよくご理解頂いているお客様から「せっかくエンジンもモーターもこれまで多く取り扱ってきたのだから、ぜひ開発して欲しい」と言われまして2019年春から開発がスタートしました。 こちらの製品はマルチコプタータイプのドローンに搭載するものですが、ドローンはバッテリーのみでは、ペイロードなしでも長くても1時間ほどしか飛行できません。お客様からはもっと飛行時間を長くしたドローンが欲しい、というリクエストがありまして開発したものとなります。やはり産業用としてドローンが活躍する上で飛行時間は大きな課題となっています。この「GT33REUレンジエクステンダー」を使うことで、その課題を解決することができると考え開発しました。
編集部:
こちらの製品で特にこだわった部分を教えてください。
三浦:
我々がこれまで模型用エンジンで培ってきた小型軽量かつ高出力なものと、お客様がご要望されている長時間飛行の実現をどう組み合わせるか突き詰めて考えていきました。特に重量はマルチコプタータイプのドローンにおいては非常に重要なポイントだと認識しています。1gでも軽く、1分でも長く飛ぶように意識して開発をおこないました。 この「GT33REUレンジエクステンダー」の一番のポイントは、付属する「スターター発電機コントローラー」なのですが、先ほど申した海外製のものでいくと、中国製のものは発電機はあるのですがスターターが付いておらず外部のスターターを使うタイプでした。また、カナダ製のものは、発電機もスターターも付いているのですがそれを制御するコントローラーがスターター用回路と発電機用回路と別々になっているため重量が嵩んででしまっていました。しかし、弊社で開発した「GT33REUレンジエクステンダー」では、独自技術(特許第6722417号)で開発されたスターター発電機コントローラーは、 セルスターター用ESCと発電機用レギュレートレクチファイア(整流器/電圧調整器)を一体化して小型軽量化を達成。これによって他社のものと比較して半分ほどの重量まで軽量化に成功しています。

独自技術によって、セルスターター用ESCと発電機用の整流調圧器≒オルタネータ)を一体化したSGC-1095HV

編集部:
「GT33REUレンジエクステンダー」はどのように活用してもらいたいでしょうか?
三浦:

今後、産業用途のさまざまなドローンが登場してくると思いますが、飛行時間は長ければ長いほど活用のシーンが増えてくると思います。この「GT33REUレンジエクステンダー」が搭載されることでドローンの活躍の場が広がってくれればと思います。

■GT33REUレンジエクステンダースペック■
種別:ドローン搭載型発電機
定格(連続)出力:1.0kW
電圧:48V
重量:2,540g(本体2,200g、補機類340g)
始動方法:セルスタート
燃料:レギュラーガソリン+2stオイル(25:1)
エンジン形式:強制空冷2ストローク単気筒
行程体積:33cc
ボア×ストローク:36×32.4mm
キャブレター:ダイアフラム式/ウォルブローWT
点火プラグ:M10mm(NGK CM-6タイプ)
使用環境:気温-20~50℃、標高:0~3,000m
耐久時間:500時間(オーバーホール間隔100時間)
製品詳細(O.S.PROFESSIONAL SITE)


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